2018/05/02

御朱印帳を片手に、大人の京都・ひとり旅

 

仕事やプライベートで、京都はよく訪れる。しかし今回の京都一泊ツアーは、新緑の時期に相応しい鮮やかな青もみじが溢れる京都の神社仏閣を巡るツアーだ。それも、御朱印帳を片手に。

 

若い時分はそれほどではなかったが、年齢を重ねるたびに想いを強くする神社や古寺巡り。

 

近頃、耳にする“ご朱印ガール”。特に若い女子の間で、御朱印帳を片手に、神社仏閣を巡る旅が人気という。しかし、年齢を重ねた大人こそ、「ご朱印片手に・・・」を改めて体験してみるのも、以前とは、また違う気持ちになれるのかもしれない。

 

 

まず初めに訪れたのは、ライトアップされた貴船神社。貴船神社はこの時期、5月12日(土)、13日(日)、20日(日)、26日(土)、27日(日)のみライトアップされる。貴船というと、よくTVや映画の舞台として登場するスポットだ。小誌『男の隠れ家』では、「裏・京都」という特集で、何度か「悲しい女の情念」、「丑の刻参り」といった悲しく、恐ろしい側面があることも紹介している。ただ、貴船神社の歴史や、そのライトアップされた参道や本宮、結社、奥宮といった社殿の荘厳さ、常に耳に入ってくる川のせせらぎの音は、むしろ人を柔らかく包み込んでくれる優しさを感じる。古くから、鴨川の源流に沿って構えられた社は、水を司る神様をまつっている。奥宮本殿の境内にある船形石に興味を引かれた。船の形に積んだ石塁の中には、古代、神武天皇の皇母・玉依姫命が、源流を求めてこの辺りに到着した際に乗っていた木の舟が安置されているという説もある。

 

夜の貴船神社の奥宮。

参道の石段。

奥宮の側にたたずむ船形石。

 

明るい時間に貴船神社を訪れた人は多いと思うが、貴船の神聖な空気に触れたければ、薄暗い夕方の時間帯がおすすめだ。ライトアップされたまばゆいばかりの青もみじと、灯がともる灯篭と社殿の美しさは幻想的である。

 

宿泊先のホテルの近くで食事をとった後、ホテルの部屋に戻り、ご朱印帳を開きながら今日一日の京都の旅を偲ぶ。いつも、京都に来るたびに顔をだす酒場やBarにもよらず、ホテルの部屋で物思いにふけるのも、時にはいいものだ。

 

翌朝は、嵐山の渡月橋から嵯峨野をそぞろ歩く。最初に訪れたのは、室町時代に創建された宝厳院。秋の紅葉で人気のスポットだが、初夏のこの時期もなかなかである。借景を望む寺社の庭園をぶらり散策すると、青もみじと近年いわれる楓の葉と、その隙間から差し込む木漏れ日が心地よい。秋には紅葉の赤と苔の緑の好対照が見ものだが、初夏のかえでの緑と苔の淡い緑がかもし出す濃淡も、また素晴らしい。宝厳院は、幾多の変遷を経て、この地に移転再興された。本堂に祀られる本尊十一面観世音菩薩や、足利尊氏が信仰したといわれる地蔵菩薩が祀られている。

 

青もみじと苔の陰影が美しい宝厳院の庭園。

参道の青もみじがまばゆい。

 

宝厳院の特別御朱印。

 

因みに、JR東海・京阪主催の「青もみじ御朱印めぐり」プランは、このコース限定のオリジナル御朱印がもらえる特典付きで、その中の宝厳院の御朱印は背景が荘厳で、御朱印帳にはぜひ収めたい。

 

観光客で溢れる竹林の径を抜けて次に訪れたのは、小倉山の中腹に位置する常寂光寺。百人一首で知られる小倉山は、都を囲む山々のなかでも、椀を返したような独特な形のせいで際立っている。中腹にそびえる茅葺の仁王門をくぐると石段の参道があり、頭上では新緑の青もみじが見事なトンネルを形づくっている。斜面にひろがる寺院の堂宇はパノラマであり、石段を登りきった辺りにある多宝塔とその周縁から望める嵯峨野の景色は、秀逸である。古くから、皇族や貴族に愛された小倉山。お寺の方の話で面白かったのが「昔の京都は貴族文化で、山といえば富士山ではなく小倉山のこと」というくだり。常寂光寺界隈をたたずみ、その文化と雰囲気に触れると、なるほどとうなずいてしまう。

 

石段上からの仁王門。

多宝塔付近からの眺め。

 

昼食は、嵯峨野の平野屋でとることに。火伏せの神を祭る愛宕神社の一の鳥居で店を構えて400年になるというお茶屋さんである。14代目の女将から、細かな食材の説明を聞きながら、湯豆腐のコースを美味しくいただいた。豆腐の滋味深い味わいもさることながら、筍の食感と鮎の優しい味付けが印象に残る贅沢な昼食である。食後、鳥居の脇に繋がれていた黒柴の子犬と戯れる。こういうことも、旅の愉しみのひとつ。

 

 

 

昼食の後は嵐山・嵯峨野界隈をぶらり散策し、八瀬比叡山口からケーブルカーで比叡山の8合目まで登り、京都の街を眺める。頂上まで登れば琵琶湖も望めるが、今日はここで降りる。降りた八瀬比叡山口付近では、これもコース限定の「八瀬もみじの小径ライトアップ」を歩く。光に浮かぶ青もみじの天井が、背景の夜空と相まって、幻想的な空間を演出する。

 

愛宕神社の一の鳥居で店を構えて400年の平野屋。

優しい食感と味付けの筍。

 

比叡山を登るケーブルカー。

ケーブルカーから望む京都の市街。

 

「八瀬もみじの小径ライトアップ」。視界いっぱいに広がる青もみじの数々。

 

院内から眺める庭園は、まるで絵画を切り取ったよう。

 

 

そして最後は、いよいよ夜の瑠璃光院。以前、秋の紅葉の明るい時期に訪れて、書院から眺める庭園の紅葉と苔の調和に感動を覚えた場所である。明治期の政治家・三条実美ゆかりの瑠璃光院は、春と秋の季間のみ特別公開される。山門をくぐると、青もみじで覆われた独特の空間は、見事のひと言につきる。秋の紅葉も勿論だが、この時期の青もみじのライトアップも決して引けをとらない。辺りの静かな気配が、いっそう静謐な雰囲気を醸しだしてくれる。

 

書院からのぞいた庭園の景観は、切り抜いた絵画のような別世界を思わせる。こういう風景に浸っていると、ついつい物思いにふけってしまうが、これも、大人ひとり旅の貴重な経験。

 

一泊の旅で、ライトアップされた神社仏閣を巡っていると、どうしても夜が遅くなる。当然ながら遅い新幹線で帰京ということになるが、日中と違って、静かな車内。御朱印帳を、バックから取り出して眺めていると、こういう神社仏閣巡りの時間こそ、日々慌ただしい時間を過ごしている大人にこそ必要な経験だと、つくづく思う。

 

宝厳院(左)と常寂光寺(右)の特別御朱印帳。どちらも「青もみじ御朱印めぐり」プランでしか得られない限定版。

 

参考:JR東海ツアーズ「青もみじ御朱印めぐり」プラン
souda-kyoto.jp/

このページの先頭へ