

幻と呼ばれる食材は数あれど、その実が伴うものは限られている。これまでの認識を覆される食材となれば、もっと出会う確立は低い。
カツオというと土佐を思い浮かべる人が大半だろう。だが、和歌山・南紀地方で穫れるカツオの味はあまり広く知られていない。ここでは串本町が発祥とされるケンケン漁と呼ばれる鰹漁がさかん。漁船の両側にはり出した釣り竿から疑似餌を流し、1本1本カツオを釣りあげる一本釣りの一種である。
釣り上げてすぐに船上で活け締め、水氷に入れて港へ運ぶため生臭さが出ず鮮度が保てる。網を使わず魚に傷がつきにくいので見た目も美しい。ここから最も脂がのった2~4.5kgの鰹を厳選し、品質を保証されたものだけが「しょらさん鰹」として名付けられる。地元か産直のみで味わえる、特級品のカツオである。
カツオと言えばたたきを思い浮かべるが、しょらさん鰹に薬味はいらない。好みでわさびをつけるくらいの刺身で、その鮮度を味わう。網元に言わせれば、釣りたてよりも1日置いた方が脂がまわっておいしいという。なまぐさ呑んべえにとっては、取り寄せたときが食べ頃というありがたい話だ。
刺身のほかは、部位ごとに調理を楽しむ。皮も、血合いも、あらも、骨も、無駄なくいただく。内蔵は刻んで塩漬けにして、酒盗になる頃次の酒宴に興じよう。
胸びれから頭にかけて斜めに包丁を入れる。背骨にあたったら反対側も同様に包丁を入れ、背骨を切り落とす。腹にも斜めに包丁を入れ、頭を腹の方へ引っ張りながら内蔵とともに取り出す。
水洗いしたカツオを三枚におろすため、腹側から背骨に沿って包丁を入れる。背側も同様に処理する。
尾を持ち、背骨に水平に包丁を入れ、身と骨を切り離す。反対側も同様に。
サクから血合いを切り取り、皮を剥いだら豪快な厚切りに。ざっと10人前の刺身となる。
焼き上がったら千切りにし、大根おろし、ねぎ、ポン酢で味を加えて出来上がり。冷めても翌日もおいしく食べられる。








