文房具の良さを語るのに、歴史やストーリーはいらない。
オンラインショップ「信頼文具舗」の和田哲哉氏が、
「良い」文房具と共に暮らす魅力を伝える信頼コラム。
先日、とある雑誌の取材で東京・お茶ノ水にある「美篶堂(みすずどう)」さんにおうかがいしました。久しぶりです。
有限会社美篶堂は上製本・特装本・和本等を製作する手製本の会社。長野県伊那市美篶に製本の主力工場があります。お茶ノ水の美篶堂には、工房とショップ、ギャラリーがあり、ギャラリーでは美篶堂とつながりのある人達の個展がいつも開催されています。
私と美篶堂さんとの接点。ステーショナリープログラムや信頼文具舗ではお馴染み、和文化ダイアリー「旧暦日々是好日」を企画されている、和文化エディター・高月美樹さんの個展がここのギャラリーで開催されたのがきっかけです。
今回の話題はふたつ。ひとつめは美篶堂の手による新刊「はじめての手製本」。和綴じ、角背上製本、丸背上製本、文庫上製本と、手製本の主だったものが、手順を追って分かりやすく解説されています。特に作業の様子を示す図版や写真は表現が的確で、手製本の構造が手に取るように理解できます。
ところでここに記載されている事柄は、ベーシックなレベルとは言え、美篶堂の貴重な製本ノウハウであるはずです。その大切な情報を囲ってしまうことなく、広く人々に伝えようとする取り組みには、本当に頭が下がる思いです。
本書の中ごろでは、豆本やアルバム、美しい化粧紙をまとった紙箱の製作も紹介。後半は「美篶堂ものがたり」というタイトルで、白井明大さんによる語りの形式により、美篶堂の皆さんの製本への取り組みが明らかにされています。
そしてこの本自体も美篶堂の製本によるもの。表紙が本文を包み込む「フランス装」という装丁が行われた、上質な一冊に仕上がっています。
「はじめての手製本(製本屋さんが教える本のつくりかた)」(クリックで拡大)