付ける?付けない?ペンホルダーの話
[2009-06-15]
まずは「収まり」の問題。革のカバーは「カッコいい」または「おしゃれ」であることが第一義。カバーづくりでは、スリムでシンプルなものになるよう、細心の注意を払って形状を決定します。そこにペンホルダーを付けると、なにか余分なものを付加した状況になりがちです。いわば「収まりが悪い」状態。せっかく追い込んだシェイプに筆記具がブラリと下がるのは、非日常から引き戻された、ありきたりな風景のような気がするのです。 あるいは、頑張って最初からホルダー込みで良いスタイルにしようとしても、ユーザーがどんな筆記具を装着したいのかが分かりづらく(ご存知のとおり、筆記具は長さも太さもまちまちですから)、なかなかベストなホルダーの寸法を決めることができません。細身の筆記具は出回っている種類が少ないですし、太軸のペンに対応するとホルダーがゴロリとしたものになりがちです。 カバーの耐久性の問題もあります。カバー自体は普通に使っていれば長持ちしますが、毎日ペンを出し入れするホルダーは、どうしても最初に壊れる部分です。作り手が長く使ってもらいたいと願うならば、ペンホルダーは正しくないものになってしまうわけです。そのほか、脱着式ホルダーのアイディアもいっぱい出ますが、使い心地と見た目とのバランス取りは、なかなか難しい。 そういったモロモロのことがらをすべて巡った結果、商品企画の担当の多くは、半端なホルダーの付加でユーザーのつかいみちを絞ったり、がっかりさせてしまうよりも、ホルダー無しのほうが本来あるべき姿なのではないかと、一度は思うようになってきます。 でもでも、もういちどユーザーの側に立ってみると、ペンホルダーを欲しい人はやっぱり多いのです。ペンホルダーを付けてくださいと願う人達の顔が開発時に浮かんでしまい、悩みは尽きません。 以上のことは、私がカバー類の商品企画に何度か立ち会って見てきた際の本当のお話です。ですので皆さんには、お店で手にしたカバーにペンホルダーが付いていなくても、それは作り手の配慮が不足しているからではなく、おそらく充分に検討された結果だと受けとめてもらえましたら幸いであります。 >> 和田哲哉の「文房具に寄す」 次週へつづく 関連記事 ・あのブロック玩具が家具になった? 組み合わせ自在のルナブロック ・3000度で発火し3000回使える ライトマイファイヤーの「ファイヤースチール スカウト」 ・戸田覚の「デジタルを愉しみ尽くす」−究極のデジタル書斎を造る 和田哲哉の「文房具に寄す」過去の記事 ・クオバディス・ジャパンの展示会から ・文房具 自分ベーシック探し ・文房具に寄す思い |
文房具をテーマにしたサイト「ステーショナリープログラム」主宰。オンラインショップ「信頼文具舗」店長。常にユーザーの視点に立ち、良質な文房具の普及に努めている
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