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まだ生きてます 私鉄の貨物列車 

[2010-08-23]

鉄道コラム「鉄学の道」/毎週月曜更新

乗りつぶし率99%の鉄道会社員が 
書き下ろす鉄分たっぷりコラム。

自社の貴重でレアな話題も 
時折飛び出します? 



 貨物列車といえば、JR貨物の大型電気機関車に牽かれて高速で通過していくコンテナ列車のイメージにほぼ統一されて随分経ちます。一昔前の、有蓋貨車や無蓋貨車、タンク車など雑多な貨車を混結した貨物列車は、操車場で貨車を集めて方面別列車に組成するヤード経由式輸送の廃止により過去のものになりました。

かつてはどこの私鉄にもこんな貨物用機関車があった 十和田観光電鉄ED402
かつてはどこの私鉄にもこんな貨物用機関車があった 十和田観光電鉄ED402(クリックで拡大)

 かつては国鉄だけでなく私鉄でも、規模の大小はあれ貨物輸送が一般的に行われていました。本来鉄道とは旅客も貨物も運ぶのが普通なわけですから、沿線の農産物や鉱物などの貨物輸送が主目的の私鉄も多数ありました。国鉄と同じレール幅の1067mm軌間であれば貨車の直通が可能なので、モータリゼーション以前は1067mm軌間の私鉄は国鉄と貨物の直通連絡輸送を行うのが当たり前だったのです。1435mm軌間の都市鉄道でも自社線内用の電動貨車を保有していました。

東武の主力機ED5010形 東武博物館
東武の主力機ED5010形 東武博物館(クリックで拡大)

 1067mm軌間の大手私鉄といえば東武・西武・名鉄・南海などですが、貨物輸送の分野では東武と南海が双璧でした。昭和40年頃、南海の主な各駅には貨物側線と貨物ホームがあり、沿線で産する繊維製品や玉ネギなど農産物を満載した貨車が常に停まっていました。同じ頃、東武ではまだ現役の蒸気機関車が貨物列車を牽いて本線上を走っており(昭和41年まで)、当時の鉄ちゃんの注目を浴びていました。

 南海では独特の凸形車体を持つ戦前製の電気機関車が主力でしたが、東武では昭和25年以降に製造されたオーソドックスな箱型車体の電気機関車が主役を務めました。東武のこのタイプの電気機関車は35両も作られ、杉戸(現:東武動物公園)には独立した機関区も設けられていました。中小私鉄には、秩父鉄道のように石灰石輸送を主目的としたものや、石炭・銅など鉱山輸送のため敷設された鉄道があり、これらは特定貨物の大量輸送を行うため多数の機関車・貨車を保有していました。炭鉱や銅山の閉山でこれらの大半は消滅しましたが、秩父鉄道の石灰石輸送は現在も盛んに行われており、15両以上の電気機関車が稼動しています。

 これら私鉄の電気機関車はだいたい出力1000kw以下、重量50t以下で、国鉄のものよりだいぶ小ぶりですが、唯一西武鉄道には国鉄主力機並みの出力2550kw、重量95tの大型機E851形がありました。昭和44年の秩父線開通時に秩父方面からのセメント輸送の重量貨物用に製造されたもので、スタイルも洗練されていてファンが多かったのですが、平成8年の貨物営業廃止で廃車となりました。

秩父鉄道の石灰石輸送列車
秩父鉄道の石灰石輸送列車(クリックで拡大)

 昭和40年代前半くらいまではどこの私鉄でも見られた貨物輸送ですが、モータリゼーションの進展で採算性も必要性もなくなり、特に大手では増大する通勤輸送の邪魔になり、経営合理化の名のもとに次々に廃止されます。一方で、臨海工業地帯の開発発展に伴い、工場・港湾輸送のための第三セクターによる貨物専用の臨海鉄道の開業が相次ぎます。これらも私鉄には違いありませんが、従来の私鉄貨物輸送とは意味合いが異なると言うべきでしょう。

岳南鉄道の貨物列車
岳南鉄道の貨物列車(クリックで拡大)

 平成15年9月、東武の貨物輸送が廃止され、大手私鉄の貨物輸送は終焉を迎えました。厳密には、メーカーから新車をJR線経由で搬入する「甲種輸送」があり、これも「貨物列車」の扱いなのでこれを受領する「貨物取扱駅」が書類上残っているケースがありますが、本来の貨物列車は、工業地帯の輸送目的で敷かれた鹿島臨海鉄道と岳南鉄道、石灰石・セメント輸送の秩父鉄道と三岐鉄道などに残るのみです。

 余談ですが、路面電車にも貨物列車がありました。東武の日光軌道線には沿線の精銅所の貨物輸送のため電気機関車がありましたし、北九州の若松には国鉄駅から埠頭までの臨港輸送用になんと貨物専用の市電があり、電気機関車の牽く貨物列車が街路を走っていました。なかなか興味深い光景であったと思われます。


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鉄学の道

山本浩(やまもとひろし)。南海電気鉄道勤務。学生の頃から鉄道好きの鉄道会社員の目線で鉄道業界のあれこれを書き下ろす。自社の貴重でレアな話題も時折飛び出します?

→  http://www.nankai.co.jp/

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