blog banner

真夏の夢 幻の都市間電車

[2010-08-04]

鉄道コラム「鉄学の道」/毎週月曜更新

乗りつぶし率99%の鉄道会社員が 
書き下ろす鉄分たっぷりコラム。

自社の貴重でレアな話題も 
時折飛び出します? 



 近接する都市と都市を結ぶ都市間電車。日本では「インターバン」などと称されます。アメリカで19世紀末から20世紀初めに流行した都市間電車「インターアーバン」が略された形のようですが、これに範をとった日本初のインターバンは明治38年に大阪~神戸(三宮)間を開業した阪神電気鉄道です。

日本の都市間電車第一号は阪神電車 大物付近を走る8000系急行
日本の都市間電車第一号は阪神電車 大物付近を走る8000系急行(クリックで拡大)

 大きな都市がいくつも並ぶ関西では、京阪、阪急、大軌(近鉄)などが次々と開業し、大阪~和歌山間の蒸気鉄道だった南海も電化で都市間電車の仲間入りをしました。これに対し、関東では東京以外の大きな都市といえば横浜ぐらいで、この両市を結ぶ京浜電鉄(京急)と東横電鉄(東急)以外は、都市間というより東京と郊外や地方を結ぶ片道輸送的な路線として発達しました。本家アメリカの「インターアーバン」はモータリゼーションで衰退し20世紀半ばには消えていきましたが、日本の「インターバン」は高速電車に脱皮し、多角経営で現在の大手私鉄に発展していったのは周知の話です。

 現在、東京・大阪以外の都市間電車というと、岐阜~名古屋~豊橋の名鉄と福岡~久留米~大牟田の西鉄ぐらいですが、日本には他にも都市間電車の計画がありました。最終的には開通しませんでしたが、一部はかなり具体化していたのです。3つ例を挙げましょう。

(1)名阪急行電鉄

 京阪電気鉄道の高速新線として建設された新京阪線(現:阪急京都線)の延長として計画されたもので、昭和4年に路線免許がおりています。現在の西向日駅あたりで分岐し、名神高速に近いルートで京都市街の南を通って大津へ抜け、八日市・永源寺から鈴鹿山脈をトンネルで越えていなべ市付近を通り、東へ直進して名古屋に至るルートだったようです。複線電化の高速路線で名阪間を特急電車で2時間余りで結ぶ計画でしたが、昭和恐慌で親会社の京阪の資金繰りが悪化し、昭和10年には免許失効となってしまいました。その後近鉄の名阪ルートが開通したため、名阪間の高速電車構想は形を変えて実現したとも言えます。

(2)加越能鉄道高速電車

 富山地方鉄道が、富山から金沢と七尾への高速電車を計画し、設立したのが加越能鉄道です。北陸地域全体の交通網を見据えた遠大な構想で、昭和29年には富山~金沢間の免許がおり、富山~高岡間については昭和34年に工事施工認可がおりて実際に用地買収に着手しました。計画では、富山地方鉄道の電鉄富山駅から出て市街を川沿いの高架線で横切り、呉羽山の南方をトンネルで越え、太閤山付近を通って北陸線の南を高岡へ向かうルートで、高岡から金沢までの詳細は決まっていなかったようです。用地買収は半分程度まで進んだそうですが、そのうちモータリゼーションが進み、北陸線が電車化・高速化されたことで計画の意義が薄れ、昭和46年に起業廃止しました。

富山地方鉄道電鉄富山駅 加越能鉄道の高速電車はここから出るはずだった
富山地方鉄道電鉄富山駅 加越能鉄道の高速電車はここから出るはずだった(クリックで拡大)

(3)筑豊電鉄

 西鉄グループの筑豊電鉄は黒崎~直方間を営業する路面電車タイプの郊外路線ですが、もともとは黒崎~福岡間に高速電車を走らせるための会社です。北九州地区と福岡市を結ぶ電車は、戦前から何度も計画され免許申請されましたが、不況やら贈収賄事件やら戦争やらでどれもモノにならず、戦後に西鉄が申請した黒崎~福岡間が昭和25年に免許され、翌年には運営会社として筑豊電鉄を設立、昭和29年に着工されました。黒崎から直方、飯塚を経て八木山峠を長大トンネルで抜け、福岡に至る計画でしたが、資金力に無理があり、昭和34年に直方まで開通したものの以遠の建設を断念、昭和46年に免許失効となりました。その後このルートで国鉄篠栗線が建設され、現在はJR九州福北ゆたか線の快速が黒崎~博多間を80分強で結んでいます。

遠賀川橋梁を渡って直方に到着する筑豊電鉄2000形電車(昭和58年)
遠賀川橋梁を渡って直方に到着する筑豊電鉄2000形電車(昭和58年)(クリックで拡大)

 社会情勢の変化で採算性が疑問視されるものもありますが、これらの路線が開通していたら、各地域の交通網は現在とは少し違った発展を遂げたかもしれませんね。





 鉄道コラム「鉄学の道」過去の記事
歌は世につれ 110年目の鉄道唱歌
東西空港アクセス事情 関空&成田
鉄道と飛行機はパートナー? 空港アクセス鉄道
あの色が僕らの憧れだった 電車のカラー・国鉄JR編
電車の人気も色次第? 電車のカラー・私鉄編 …

→ 鉄道コラム「鉄学の道」記事一覧へ

鉄学の道

山本浩(やまもとひろし)。南海電気鉄道勤務。学生の頃から鉄道好きの鉄道会社員の目線で鉄道業界のあれこれを書き下ろす。自社の貴重でレアな話題も時折飛び出します?

→  http://www.nankai.co.jp/

↓ トラックバック一覧(0)

トラックバックアドレス(URL)

http://www.kakurega-online.com/blog/trackback.php?idx=331


男の隠れ家 1月号
男の隠れ家1月号 
ニッポン、ライブハウス伝説

日本のライブハウスの始まりから現在、必聴・必見のライブハウス名盤60選、こだわりのオーディオの世界 ほか