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列車に揺られて

[2010-06-28]


「男の隠れ家」本誌では語ることの出来ない取材裏話や 
追加情報、はたまた個人的な四方山話まで、何の役にも 
立たないコラムを連載します。どんな奴が「男の隠れ家」を 
作っているのか、興味のある方はどうぞ寄ってらっしゃい。

(今週は KO→SM)


 皆さまは休日はどのように過ごされていますか? 私SMは完全なインドア派ゆえ、休日は家で本を読んだりごろごろしたり、出かけるにしても美術館やコンサートなど近場で済ませてしまうことがしばしばです。

 少し前の話になりますが、先月のGWも取材など休日出勤が重なったこともあって、特にどこも出かけず本やDVDを見て過ごしました。気晴らしに美容院へ行ったところ、専門学校を出たてとおぼしき若い女性アシスタントが、しきりに話しかけてきます。

「ゴールデンウィークはどこかへ行かれたんですか?」

「いやー家でビデオ見たり本を読んだりで閉じこもって、全然出かけなかったんですよ」

「何のビデオを見たんですか?」

「……(タルコフスキーの『ノスタルジア』だけど言ってもたぶん分からないだろうから)昔の古いビデオとかを見たんですよ」

「お薦めのビデオってありますか? どんな作品が好きなんですか?」

「……(ずいぶんツッコんで聞いてくるな。。増村保造、溝口健二、小津安二郎……とか言ってもたぶん分からんだろうし)む、昔のモノクロの日本映画とかが好きですね」

「昔の作品って言葉遣いが全然違いますよね」

「(確かに昔の作品って今と違って言葉遣いがすごく綺麗! さては彼女、結構映画とかを観るのかしらん)そうですよねー、いいですよねー!」

「SMさんすごい! 言葉の意味が分かるんですか?」

「ヘ??」

「ほら、“おぬし”、とかいうじゃないですか」

「(……それは時代劇!!)……。。」

「本はどんなのが好きなんですか?」

「……(まだ聞いてくるんかい! もういい加減にやめてくれ~!)最近のはあまり読まないので、昔の作家の作品とかを……」

「それって誰ですか? 浅田次郎、とか?」

「……」

「ところで雑誌の編集をされてるって、何の本ですか? 『コロコロコミック』とか 笑」

「……(アハ、ハ、ハハ。君、面白いね。。)」

 こんな一口話はさておき、インドア派の私でも、旅に関するエッセイなどを読むと猛烈に旅に出たくなるときがあります。

 森茉莉や永井荷風のパリ、須賀敦子のイタリア、壇一雄のスペイン……等々、名エッセイはたくさんありますが、最近読んだ四方田犬彦氏による『旅の王様』はかなり面白かったです!

 ただ名所旧跡の素晴らしさを謳うのではなく、訪れた国は数知れず、語学堪能で一見旅慣れているかと思われる筆者の、少々ヌケた失敗談(ソ連崩壊前のグルジアでの盗難騒動)や、友達と出かけた旅先で会話がなくなった時にすると盛り上がる話題(サハラ砂漠での寿しネタクイズ)、絵はがきの意義(写真を撮りまくるのではなく、思い出に残る気に入った絵はがきを1枚買う)など、四方田さんなりの旅の愉しみ方が軽快に綴られています。読みやすい内容なので、旅に携えていく本としてもお勧めの一冊です。

 さて、先日は『男の隠れ家』恒例の「ローカル線」特集号の取材で、富山地方鉄道を取材して来ました。行き先によって富山鉄道本線と、立山線、不二越・上滝線の3路線に分かれますが、私が担当したのは電鉄富山~宇奈月温泉、総距離53.3kmの本線になります。

 この路線の見どころは、なんといっても車窓から望める立山連峰でしょう。夏でも頂きに雪を残す雄壮な立山連峰を背景に、田園の中を列車がコトコトと走り抜けるローカル線です。

……が、私たちスタッフが取材した3日間はあいにくの曇り空と雨が続き、一度もその姿を拝むことが出来ませんでした。取材前から、立山連峰を背景に走り抜ける富山地方鉄道の写真を頭に思い描いていたため、「どうしよう!! 今さら取材日程を延ばすこともできないし……」と少々不安になりましたが、70年以上前に造られたという古い木造駅舎が残っていたり、周辺の町の静かな佇まい、味のある車両が今なお現役だったりと、立山連峰は見えずとも、とても魅力的な路線でした(詳しくは6月27日発売号をぜひご覧ください)。

 ローカル線に揺られながら、ある時は車窓をぼーっと眺めたり、うつらうつら眠ったり、携えてきた本をめくったり。明確な目的を持たずに電車に乗って気ままな旅に出る。そんな贅沢な時間の使い方をしてみたいものですね。

ずっと雨が続いていた富山地方鉄道の取材だったが、早朝、わずかな時間だけ晴れた時の1枚。青々とした緑の中を抜け、寺田駅へ滑り込む列車。(写真◎金盛正樹)
ずっと雨が続いていた富山地方鉄道の取材だったが、早朝、わずかな時間だけ晴れた時の1枚。青々とした緑の中を抜け、寺田駅へ滑り込む列車。(写真◎金盛正樹)(クリックで拡大)

築70年近い寺田駅の木造駅舎。タイル張りの柱や、木製の建具など、古びているが味のある佇まい。


築70年近い寺田駅の木造駅舎。タイル張りの柱や、木製の建具など、古びているが味のある佇まい。
築70年近い寺田駅の木造駅舎。タイル張りの柱や、木製の建具など、古びているが味のある佇まい。(クリックで拡大)

車窓風景。椅子の背は、進行方向に応じて自由に向きを変えられる。
車窓風景。椅子の背は、進行方向に応じて自由に向きを変えられる。(クリックで拡大)





駅の中に飛んできたツバメのつがい。
駅の中に飛んできたツバメのつがい。(クリックで拡大)






途中下車した「石田駅」の目の前にあった菓子店にて。なんと大正10年生まれ(!)のおじいちゃんが、今でも現役で和菓子を作っている。買い食いした栗饅頭は、ぽっくりした皮の中になめらかな栗の餡がたっぷり詰まっていて美味しかった。(写真◎金盛正樹)
途中下車した「石田駅」の目の前にあった菓子店にて。なんと大正10年生まれ(!)のおじいちゃんが、今でも現役で和菓子を作っている。買い食いした栗饅頭は、ぽっくりした皮の中になめらかな栗の餡がたっぷり詰まっていて美味しかった。(写真◎金盛正樹)
途中下車した「石田駅」の目の前にあった菓子店にて。なんと大正10年生まれ(!)のおじいちゃんが、今でも現役で和菓子を作っている。買い食いした栗饅頭は、ぽっくりした皮の中になめらかな栗の餡がたっぷり詰まっていて美味しかった。(写真◎金盛正樹)(クリックで拡大)


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男の隠れ家 1月号
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