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どこに住む?

[2010-06-16]


「男の隠れ家」本誌では語ることの出来ない取材裏話や 
追加情報、はたまた個人的な四方山話まで、何の役にも 
立たないコラムを連載します。どんな奴が「男の隠れ家」を 
作っているのか、興味のある方はどうぞ寄ってらっしゃい。

(今週は TA→KO)


 「どこでもいいから好きな土地に(仕事やお金の問題ぬきで)住めるとしたら、どこに住む?」

 これ、私の大好きな “妄想ネタ” のひとつですが(笑)、さて、皆さまはどんな町に住んでみたいと思いますか?

 仕事がら、いろいろな土地や町を訪ね歩いておりますが、それこそ能動的に「住みたい!」とまで思う土地は、結構あるようで意外に少ないものです。

 そもそも「どこに住むか」は、日常のなかで自分が何を一番大事にするかによって、いろんな選択肢が生まれるものだと思いますが、私の場合は毎日目にする “風景”。しかも、“急な山に囲まれた港町の風" に限定されるようだなぁ、ということに気づいてきました。例えばどこかって? 小樽でしょ、函館でしょ、そして何と言ってもあそこです、長崎。

坂の向こうに見える海。しも石畳。いいですね、長崎の路地は。
坂の向こうに見える海。しも石畳。いいですね、長崎の路地は。(クリックで拡大)

 深い入り江を取り囲む斜面に階段のように家々が立ち並ぶ、まるで古代劇場のようなその姿。長崎にいるだけで、そんな風景の中に立っているというだけで、すっかり幸せな気分になります。歴史・文化どれをとっても奥深い土地ゆえの陰翳もあり、しかも美しい飲み屋街もあり、坂道の路地の風景もあり……うーん、いい町だなぁ。

 なんて話を行きつけとなった長崎の居酒屋でしていたところ、お隣の女性2人連れもそんな「長崎好き病」の罹患者らしく、「長崎にいるだけでもう幸せって思うんですよねー。なんなんでしょうかね、これは」といい合ってしまいました。聞けば昨夜突然に思い立って、今朝、大阪から来崎なさったとか。やっぱりいるんですねぇ、同じような方が。

鎧戸に揺れる制服、なんて、映画のよう。こういう何気ない景色にぐっときます。
鎧戸に揺れる制服、なんて、映画のよう。こういう何気ない景色にぐっときます。



(クリックで拡大)

古びた和洋折衷のお屋敷も残っていたりして、風景に飽きません。
古びた和洋折衷のお屋敷も残っていたりして、風景に飽きません。

 ちなみにこの「どこ住みたい?」という質問をすると、答えも人それぞれでなかなかに面白いものです。絶対に四国の山奧という人もいれば、嫁の実家がある信州・松本かなぁという人、牧歌的な風景の盛岡近郊で自給自足のコミューンを作るんだという人、などなど。住みたい場所って、その人の世界観そのものだったりするのでしょうね。

 と同時に、例えば今回のローカル線取材などで旅をすると、無人駅があるだけの、いかにも不便な谷間の急斜面などにも、当たり前ですが民家があるのを目にします。そんな時「人は、どんな場所でも住み続けてゆくものなんだなぁ」と感慨深くなることがあります。「ここで生まれて、ここから出たことがない」というおばあちゃんの話も、そんな集落では当たり前に聞きます。

 ではそんなおばあちゃんの「世界が狭い」かというと全くそんなことはないわけで、与えられた場所で淡々と暮らす日々の中で培われてきた生活哲学のいろいろは、逆にとても広く豊饒な世界であったりします。まるで、木のようです。自らその生える場所を選ぶことはできないけれど、生まれ落ちたその場所にどっしりと根を張って茂ってゆく、大きな木みたいですよね。

 ということは、住む場所を自分で選ぼうが選ぶまいが、要は己がそこで納得して生きているかどうかなのかもしれません。

 とはいえ、この妄想癖があるからでしょうか。どうも家を「買う」という行為が怖くて仕方ありません。「賃貸の家賃を払い続けること考えたら、買った方がいいじゃん」ということなんですけど、でもそうするとそこにずっと住まなくちゃいけない気がするし、「もしそうなったら貸せばいいんだよ」と言われても、そうこちらの都合よく借り手がでるかわからないしなぁ、と。何より「もし住むとしたら、次はどこに住もう」と考える他愛ない自由が、ちょっと減ってしまう気がして。

 まあしかし「いい歳して学生みたいなこと言ってんじゃないわよ」と母ちゃんなどに一喝されるほどに、責任感と覚悟のない生活をしているだけだと言ってしまえばそれまでではあります。でも、好きなんですよねぇ、この妄想(笑)。

 もし、好きな場所にどこでも住まわせてあげるからと言われたら、あなたはどこに住みたいですか?


(写真◎John Lee)





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