電車の寿命 80歳過ぎても働けます
[2010-06-14]
鉄道コラム「鉄学の道」/毎週月曜更新 乗りつぶし率99%の鉄道会社員が 書き下ろす鉄分たっぷりコラム。 自社の貴重でレアな話題も 時折飛び出します? WHOの統計によりますと、2010年現在の日本人の平均寿命は83歳。加盟193カ国中、サンマリノと並んで1位だそうです。サンマリノ共和国はイタリアの中にある人口3万人の小さな都市国家ですから、実質日本が最長寿国と言えます。今は70歳代で亡くなると「まだお若いのに気の毒に…」などと言われる時代ですが、さて電車の場合は人間ほど長生きするでしょうか。 現在、イベント用の保存車両などを除き、通常の運行に使っている最古参車両は、阪堺電気軌道のモ161形です。昭和3年製で今年82歳になりますがまだ現役で、毎日普通に運行されています。ただし、屋根が冷房機の重みに耐えられないため非冷房のままで、真夏の炎天下は車庫で昼寝しています(こういうレトロ車両は冷房が無いほうが趣があっていいという人も多いですが)。 イベント用の車両では、同じ昭和3年製で映画「RAILWAYS」にも出演した一畑電車のデハニ50形や大正15年製の高松琴平電鉄1000形・3000形、電車以外ではJR九州で「SL人吉」に使用中の大正11年製58654号機などがあります。 電車は通常40年以上は使えるのですが、部材の傷みだけでなく、旅客サービス上の問題で取替えが必要になる場合も多くあります。新型車ができると旧型車はスタイルも設備も見劣りがするため、サービス水準に大差が出ると旅客の不満が増大し、時にはライバル路線に乗り換えられてしまいます。代表的な例は旧国鉄が通勤用に21年間にわたって3447両も製造した103系電車です。戦前製車両を淘汰するため首都圏・関西圏に大量投入され、多くの路線がこの車両に統一されて国鉄の顔のような存在となっていました。ところが、細部は年々改良されたとはいえあまりに長い間同じ基本設計の車両を作ったため私鉄の新型車と比べて陳腐化が甚だしく、老朽化も相俟ってJR化後に103系の取替え対策が大きな課題になりました。ここでJR東日本とJR西日本は対照的な方向を打ち出します。 JR東日本は平成4年に901系(後の209系)を世に送り出しますが、この車両は「コスト半分、寿命半分」というコンセプトで作られており、何度も大規模な更新修繕をして長く使うより償却期間(13年)程度で廃車して新車に替えていく前提で、構造を簡略化して新造費を下げたものです。陳腐化する頃に次々新車と換えていくのでサービス上も好ましく、更新費用も助かるという考え方です。E231系などその後の新車も基本的にはこの考え方が踏襲されています。 一方JR西日本は、103系に代わる新型車として207系を登場させましたが、こちらは従来同様、更新修繕して使い続けるため内装などもそれなりに凝っており、強力なライバルの私鉄各社への対抗を意識しています。その代わり、古い103系も簡単に廃車せず大規模な更新修繕を施し、見た目も内装も207系と同レベルの「スーパー103系」まで登場させる物持ちの良さを見せています(昭和39年製のトップナンバーも健在です)。 この結果東の103系は既に全廃、西は400両以上が現役となっているわけですが、どちらが良いとは一概に言えません。ただし、どんなタイプの車両であっても然るべき寿命が来るまで第一線で使い続けるには、良好なメンテナンスを欠かさないことが条件です。 鉄道コラム「鉄学の道」過去の記事 ・日本の夏の必需品 冷房車 ・電車のデッドヒート? 複々線の醍醐味 ・都市をグルッと 環状線の効用 ・餘部の仲間たち トレッスル橋という鉄橋 ・都会の一隅にある、こんな路線 … |
山本浩(やまもとひろし)。南海電気鉄道勤務。学生の頃から鉄道好きの鉄道会社員の目線で鉄道業界のあれこれを書き下ろす。自社の貴重でレアな話題も時折飛び出します?
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