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餘部の仲間たち トレッスル橋という鉄橋

[2010-05-17]

鉄道コラム「鉄学の道」/毎週月曜更新

乗りつぶし率99%の鉄道会社員が 
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 今年8月12日、日本一有名な鉄橋である山陰本線餘部橋梁が新しい橋に切り替わります。明治45年の開通以来88年の風雪に耐え、強風による列車転落という不幸な事故もありましたが、その雄大な立ち姿は日本の鉄道を代表する景観の一つとして親しまれてきました。そんな大鉄橋も、ついに終焉のときを迎えます。

山陰本線最大の名所 餘部鉄橋
山陰本線最大の名所 餘部鉄橋(クリックで拡大)

 餘部橋梁は長さ310.59m、高さ41.45mの鋼鉄製で、鋼材で組まれたヤグラ状の橋脚11本に支えられています。遠くから見ると、並んだ鉄塔の上に割り箸を乗っけたような感じで非常に華奢に見え、列車が通過するとハラハラするような橋です。このように木材や鉄材でヤグラを組んだ形の橋脚に桁を乗せた橋を「トレッスル橋」といいます(「トレッスル」とは「架台」の意味です)。

 アメリカの西部劇映画で、丸太で格子に組み上げられた橋の上をSL列車が走るシーンが時々出ますが、あれもトレッスル橋です。橋脚が多くなるので幅の広い水流の中には建てにくい代わりに高い橋脚が作りやすく、日本でもコンクリート橋の信頼性が充分確立していなかった大正から昭和初期、谷底から高い位置に架かる橋に使われています。その後技術の向上でコンクリート橋脚やコンクリートアーチが一般的になり、トレッスル橋は多くは作られませんでした。

仙山線 陸前白沢〜熊ヶ根 第二広瀬川橋梁
仙山線 陸前白沢〜熊ヶ根 第二広瀬川橋梁(クリックで拡大)

旧三菱石炭鉱業大夕張鉄道 旭沢橋梁
旧三菱石炭鉱業大夕張鉄道 旭沢橋梁(クリックで拡大)


南海高野線 下古沢〜上古沢 中古沢橋梁
南海高野線 下古沢〜上古沢 中古沢橋梁(クリックで拡大)

 日本のトレッスル式の鉄道橋は現在11箇所存在するということで、餘部の他には、仙山線熊ヶ根の第二広瀬川橋梁、青梅線軍畑の奥沢橋梁、南海高野線の中古沢橋梁、南阿蘇高原鉄道の立野橋梁などが知られており、廃線になったものでも北海道夕張市の旧三菱石炭鉱業大夕張鉄道旭沢橋梁が残っています。これらはいずれも昭和2~4年に作られたもので、深い渓谷に架けられており、高さは第二広瀬川(51m)のように餘部より高いものもありますが、長さはだいたい100m前後です。

 やはり餘部の310mという長さはスケールで群を抜いており、トレッスル橋脚の数も餘部を除いては2~3本というところです。この中で、旭沢橋梁だけはちょっと特殊な形になっており、写真のようにトラス風の構造で部材が細く、餘部よりはるかに華奢に見えます。この区間が昭和48年に廃止されるまで、ここを決して小型とはいえない蒸気機関車が石炭を満載した重量貨物列車を牽いて走っていたとは俄かに信じがたいものがあります。

 これらのトレッスル橋は、鋼材で構成された武骨な橋なのに、緑濃い深山の谷間にあっても不思議に周囲の景観に溶け込んでいます。それゆえか、いずれも「撮り鉄」にブックマークされる列車撮影ポイントになっています。餘部の場合は谷が広いため様々な方向から撮影できること、最も綺麗に橋と列車が撮れる位置に足場があること(いわゆる元祖「お立ち台」です)などから、日本でも最高の鉄道撮影地の一つになっていることは周知の話です。

 また、トレッスル橋はスマートさには架けるものの、複雑に組まれた鋼材など、東京タワーなどにも似たアナログ的な力強さを感じる姿にどこか外観的魅力が感じられます。最近流行の「工場萌え」と相通ずる感覚かもしれませんが、橋そのものも観光対象になっており、毎日観光バスがやってくる餘部の他、南海高野線中古沢橋梁でも橋の直下の道に南海電鉄が見学用の展望デッキを設けています。

 さて、架け替えにより解体される運命となった餘部鉄橋ですが、兵庫県では旧鉄橋の活用方について検討の結果、餘部駅側の橋脚3本・3スパン分をそのまま保存し、周辺整備の上、展望施設とする計画を進めています。賛否はあるようですが、あの雄大な鉄橋のイメージは全国の鉄道ファンの記憶に焼付いており、その一部でもそのままの姿を伝えていけるなら幸いです。トレッスル橋はコンクリート(PC)橋に比べてメンテが大変ですが、現役のものもできるだけ長くその姿を保てることを祈ります。

「お立ち台」から見た餘部鉄橋
「お立ち台」から見た餘部鉄橋(クリックで拡大)





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鉄学の道

山本浩(やまもとひろし)。南海電気鉄道勤務。学生の頃から鉄道好きの鉄道会社員の目線で鉄道業界のあれこれを書き下ろす。自社の貴重でレアな話題も時折飛び出します?

→  http://www.nankai.co.jp/

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