鉄道荷物輸送 昔「チッキ」と呼ばれたものがあった
[2010-04-19]
鉄道コラム「鉄学の道」/毎週月曜更新 乗りつぶし率99%の鉄道会社員が 書き下ろす鉄分たっぷりコラム。 自社の貴重でレアな話題も 時折飛び出します? 「荷物車」という車両が本線上から見られなくなってもう20年以上経ちます。かつて、鉄道においては「貨物」とは別に「荷物」も運送していました。貨物輸送とは全く異なる体系で、旅客輸送の一環としての扱いになっていました。 「貨車」とは別に旅客車扱いの「荷物車」が多数存在し、中長距離の客車列車には必ずと言っていいほど連結され、湘南電車など中距離電車の一部にも専用の荷物電車が連結されていました。 手荷物と小荷物「荷物」には、手荷物と小荷物があります。手荷物とは、乗客の携行する荷物のことで、網棚に載せられないような大荷物を持っていく場合、乗車券を提示して別送荷物として預け、安い料金で目的地の駅まで送ってもらう制度です。飛行機の預託手荷物と似ていますが、乗客と同じ列車に乗せるとは限りません。この制度は「チッキ」と呼ばれていました(チケットがなまった呼び方という説があります)。 「チッキ」は、現在のように着替えの詰まったバッグは宅配便で送って、小物は現地のコンビニで、というような行き方が想像もできなかった時代にはかなり利用されたようです(スイスでは現在も「ライゼゲペック」という名の同様のサービスが行われており、個人旅行でスーツケースが邪魔になるときなど便利ですが、こちらも御多聞にもれず年々サービスが低下しているようです)。 小荷物とは、駅から駅へ荷物だけを有料で送る制度で、貨物の小口輸送のようなものです。全国の駅で取り扱われており、私鉄の駅でも扱われていたので、国鉄駅から私鉄の駅へ送ることもできました。 昭和30年代、大阪・泉州の紡績工業地帯の南海電鉄の各駅には、春になると全国各地から就職してくる女工さんの荷物が届いて積み上っていたそうです。 今も地方の古い駅舎には、出札窓口の横にやたら低いカウンターが残っていたりしますが、これが荷物の窓口跡です。現役の頃はこのカウンターに専従の係員がいて、荷物の重量を測る秤が象徴のように置いてありました。受け付けた荷物は荷物車に積み込まれ、拠点駅で積み替えられて全国各地へ運ばれたわけです。東海道・山陽線などの主要幹線には、荷物車専用の定期の急行荷物列車が何本も設定され、時刻表にも載っていました。 しかし、駅から駅へ送るのが基本ですから、原則として荷物は家から駅まで運んで預け、届いたら駅まで取りに行かなくてはなりません。駅に荷物が届いてもすぐ受取人に連絡してくれるわけではありませんから、受取人は届く時分を見計らって駅に問い合わせに出向いていました。それでも、郵便小包以外で荷物を送る手段としては鉄道小荷物が長い間最も一般的なもので、誰も不便とは思わなかったのです。 |
山本浩(やまもとひろし)。南海電気鉄道勤務。学生の頃から鉄道好きの鉄道会社員の目線で鉄道業界のあれこれを書き下ろす。自社の貴重でレアな話題も時折飛び出します?
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