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電車の保存 残してほしいあの電車

[2010-04-12]

鉄道コラム「鉄学の道」/毎週月曜更新

乗りつぶし率99%の鉄道会社員が 
書き下ろす鉄分たっぷりコラム。

自社の貴重でレアな話題も 
時折飛び出します? 



 富士急行の終点河口湖駅で降りると、駅前広場の右手に茶色い電車が鎮座しているのが目に入ります。富士急の前身、富士山麓電気鉄道のモ1形(昭和4年製)で、富士急の最初の電車です。同社創立80周年事業として、新造時の姿に復元のうえこの場に保存展示されたもので、露天保存ですが会社の直接管理下にあるだけに、美しい姿を保っています。

河口湖駅前に保存されている富士山麓電気鉄道モ1形
河口湖駅前に保存されている富士山麓電気鉄道モ1形(クリックで拡大)

 博物館以外で鉄道車両が保存されている例は、全国でそれこそ数え切れないほどあり、公園の片隅に置かれたSLや路面電車は誰しも一度くらい見た覚えがあるでしょう。保存されている事情は様々ですが、公的なものとしては、その土地周辺で走っていた車両を廃車や路線廃止のときに自治体が引き取って記念に展示するというのが最も多い例です。

 自治体の希望ならば、廃車車両は無償で寄付されるのが普通で、場所と設置およびその後の管理費用は自治体の負担になります。1970年代前半にSLが次々と姿を消し、SLブームが起きていた頃には、観光資源にと考えたのか各地の自治体が先を争うようにSLを保存しました。


安直な保存はたちまち劣化する


浜寺公園に保存されている阪堺モ130号。よく見るとだいぶ腐食が出ている
浜寺公園に保存されている阪堺モ130号。よく見るとだいぶ腐食が出ている(クリックで拡大)

 しかしながら鉄道車両というのは、走らせつつ不断のメンテナンスを続けてこそ四、五十年はもちますが、ただ置いておくだけだとたちまち劣化します。空調管理された博物館の建物内なら問題ありませんが、露天に雨ざらしの場合、まず日の当たる側から塗装が褪せます。

 次に雨水の溜まりやすい車体下部の外板から腐食していき、そのうち誰かのイタズラでガラスも割れます。SLに比べて鋼板の薄い電車などは、十年も放置すればボロボロになってしまいます。安易に保存したものの管理者がメンテの予算もとれずに放置したまま忘れられるケースも多く、手の施しようがなくなってせっかくの車両を解体してしまうこともありました。やはり意義を理解しないまま「飾り」としてとりあえず置いた、というような安直なものは永続きしません。

 個人で保存する場合はお役所仕事よりは愛着を持って対処してくれるでしょうが、個人の力できちんとメンテするのは相当な覚悟と財力が必要です。小型の車両を取得して建物の中に収納するのが最も無難な方法ですが、果たしてご家族のご理解が得られるかどうか……。大阪市西区のとある企業の本社ビルの1階ホールには、オーナーのご趣味らしくC57形SLが保存展示されています。会社の看板がわりのようで見事に磨き上げられ、日本一美しい保存車両という声もあります。これこそ理想形ですが、ハードルは高いですね。

鉄学の道

山本浩(やまもとひろし)。南海電気鉄道勤務。学生の頃から鉄道好きの鉄道会社員の目線で鉄道業界のあれこれを書き下ろす。自社の貴重でレアな話題も時折飛び出します?

→  http://www.nankai.co.jp/

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