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似てるようだけど違います、座席指定券と特急券

[2010-03-08]

鉄道コラム「鉄学の道」/毎週月曜更新

乗りつぶし率99%の鉄道会社員が 
書き下ろす鉄分たっぷりコラム。

自社の貴重でレアな話題も 
時折飛び出します? 



 JRの特急に乗るときは、当たり前の話ですが、特急券が必要です。特急券を買うと座席指定があり、自由席に乗るときは料金が通常510円安くなります。急行の場合も急行券が必要ですが、急行で指定席に乗る場合は別に座席指定券も必要になります。つまり、特急料金は座席指定込みの値段なのに急行料金はそれが含まれていないわけです。そのため自由席急行料金というのはありません。この差は何でしょうか。

「特急」が特別な列車だった時代 新幹線開業前の特急「こだま」
「特急」が特別な列車だった時代 新幹線開業前の特急「こだま」(クリックで拡大)

 明治45年に「特別急行列車」が誕生して以来、ほぼ半世紀にわたって「特急」は特別な格の列車であり続け、昭和35年までは東海道・山陽筋にしか存在していませんでした。昭和40年代初めまでは特急といえば全車指定席が当然だったのです。特急の自由席は例外的措置として始まり、昭和47年に毎時の頻繁運転・自由席設置の「エル特急」が設定されてようやく特急の自由席が一般化しました。こうした経緯から、特急料金は座席指定込みが原則で自由席では座席指定料金相当分を割り引くという制度が残っているのです。急行はもともと自由席のほうが原則で指定席が付加サービスだったので、別々の料金になっています。

名鉄の一部指定席特急 特別車1700系2両+一般車2300系4両
名鉄の一部指定席特急 特別車1700系2両+一般車2300系4両(クリックで拡大)

名鉄の全車指定席特急「ミュースカイ」2000系
名鉄の全車指定席特急「ミュースカイ」2000系(クリックで拡大)



 私鉄ではどうでしょうか。平成22年2月現在、大手私鉄で常時特別料金を徴収する「特急」を運転しているのは、東武・西武・京成・小田急・名鉄・近鉄・南海の7社で(他に、中小でも富山地方鉄道・長野電鉄・富士急行に有料特急があります)、いずれも専用のデラックス車両が充てられており、やはり座席指定が原則になっています。

 従って特急料金には座席指定分が含まれているため別途の座席指定券は不要ですが、名鉄と南海は自由席の一般車を連結した特急があり、この列車には「特急券」ではなく南海は「座席指定券」、名鉄は「特別車両券(ミューチケット)」を適用しています。他の5社の特急が当初から有料の特別列車だったのと違い、名鉄と南海はもともと料金不要の特急があって、後から指定席が登場したという事情によります。

 「特急料金」は「他の列車より速い」という速達サービスの対価ですから、これを設定すると指定席だろうと自由席だろうと、特急と名の付く列車に乗っているすべての乗客から料金を頂くことになります。そのため、それまで座席指定なしで料金不要の特急を利用していた乗客にとっては不都合です。一方、「座席指定料金」は「着席を保証する」という付加価値の対価ですから、乗車一回につきいくらという定額です。このため特急料金のように乗車距離によって価格差をつけることができませんし、付加価値の内容からいってあまり高額にはできません。東武や近鉄のような長距離を運行する会社にとっては特急料金のほうが有利です。

南海の一部指定席特急 1000系のサヨナラ運転
南海の一部指定席特急 1000系のサヨナラ運転(クリックで拡大)

運転開始から間もない南海特急「サザン」 座席指定車10000系2両+一般車7100系4両
運転開始から間もない南海特急「サザン」 座席指定車10000系2両+一般車7100系4両(クリックで拡大)

 南海は、高野線の「こうや」「りんかん」、空港線の「ラピート」、南海線の「サザン」の4種の特急を運転していますが、「こうや」「りんかん」「ラピート」には特急料金を適用し、「サザン」には座席指定料金を適用しています。

 「サザン」の前身は昭和37年に運転開始した和歌山港で徳島航路と接続する四国連絡特急で、翌昭和38年から一部車両を座席指定としていました。車両は転換クロスシート装備の11001系(昇圧改造後1000系に改番)を充てていましたが、老朽化で昭和60年から現在の「サザン」10000系に置換えとなりました。

 このとき、特急の自由席をどうするかが検討されたのですが、特急料金適用の全車指定席特急にすると速達列車の輸送力が不足し、別途に一般車使用の自由席特急を走らせると今度は輸送力過剰で車両も不足します。このため、輸送力を確保しつつ車両新造費も抑える苦肉の策として、デラックス車の10000系に一般の通勤車両を連結するという、現在の「サザン」の形態ができました。指定席と自由席でえらい格差ですが、かえってその発想が評価され、鉄道友の会からローレル賞を頂きました。こうした事情から、南海は特急料金適用列車と座席指定料金のみ適用の特急列車が並存する珍しい例になっています。





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鉄ちゃんの憧れ、「かぶりつき」
日本人で良かった! 駅弁の楽しみ
鉄道と軍隊、密接な関係
広告電車とラッピングトレイン
鉄道の青信号は白かった? 信号機の話 

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鉄学の道

山本浩(やまもとひろし)。南海電気鉄道勤務。学生の頃から鉄道好きの鉄道会社員の目線で鉄道業界のあれこれを書き下ろす。自社の貴重でレアな話題も時折飛び出します?

→  http://www.nankai.co.jp/

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