鉄ちゃんの憧れ、「かぶりつき」
[2010-03-01]
鉄道コラム「鉄学の道」/毎週月曜更新 乗りつぶし率99%の鉄道会社員が 書き下ろす鉄分たっぷりコラム。 自社の貴重でレアな話題も 時折飛び出します? 電車の先頭車に乗ると、運転室背後の仕切りの窓に張り付いて熱心に前方を見ている人がたいてい一人ぐらいはいます。もちろん子供が多いのですが、明らかにそれとわかる「鉄ちゃん」もよくいます。開業したばかりの新線の電車などでは、この部分が鉄ちゃんで鈴なりになっています。 鉄ちゃんはここを称して「かぶりつき」と呼んでいます。本来は歌舞伎の舞台際の最前列座席のことですが、電車の最前部であり、また「かぶりつく」ように張り付いて前方を見ることからそう呼ばれています。 濃い鉄ちゃんは、ここから前方の線路の線形や分岐点と駅構内の線路配置、速度標識などを確認しているのですが、進む方向に次々展開する風景を眺めるのは、鉄ちゃんでなくとも楽しいものです。 これは日本だけの現象ではないらしく、NYの地下鉄などにも「かぶりつき」に張り付く人がいるようですし、パノラマカーのような前面展望席付き電車を初めて作ったのはイタリア国鉄です。もっとも、日本ほど前面展望を良くすることを考慮した車両は欧米ではあまり見かけませんが(機関車牽引が普通という事情もあります)。 遮光幕は避難の的ところで、電車の運転室背後の仕切りの窓には、遮光幕が付いています。ロールスクリーンが一般的ですが、横引きカーテンもあります。夜間に走行するとき、明るい客室の様子がフロントガラスに映り込んで視界を妨げるのを防ぐためのものなので、昼間は地下線か長大トンネル以外では普通使いませんが、国鉄末期の現場が荒れていた頃は、運転室を「見せない」ために使われていました。 運転士の執務態度のことだけでなく、前面展望を奪われた乗客からはすこぶる不評で、私鉄と比較しての批難のネタになっていました。JRになってからはそのへんを相当意識したのか、一斉に遮光幕を上げさせ、「JRになって変わりました」という一つの象徴のようにアピールしていました。そればかりか、前面展望を重視した車両を作り出し、251系「スーパービュー踊り子」などの展望特急だけでなく一般車でも、JR西日本221系のように前面窓と仕切り窓を思い切って大きくした車が登場しました。 |
山本浩(やまもとひろし)。南海電気鉄道勤務。学生の頃から鉄道好きの鉄道会社員の目線で鉄道業界のあれこれを書き下ろす。自社の貴重でレアな話題も時折飛び出します?
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