食堂車ノスタルジー
[2009-12-21]
しかしこの頃、食堂車の評判としては、「高くてまずい」が定着してきました。実際、そうだったのでしょうか。「鉄道ピクトリアル」No.761に掲載されている昭和31年の食堂車メニューによると、コーヒー50円・ビール大瓶145円・カレーライス100円・グリルチキン定食330円などとなっています。昭和30年の物価は大卒初任給1万700円・コーヒー50円・かけそば30円・映画入場料100円(「週刊昭和タイムズ」No.16より)ですから、現在の感覚に直すとコーヒー800円・ビール大瓶2500円・カレー1500円・グリルチキン定食5000円というところでしょうか。 コーヒー以外の市中価格がいくらだったのか分かりませんが、今の感覚なら「チョー高い!」ですね。これで不味ければ店をぶっ壊したくなると思います。味のほうはといえば、鉄道博物館のレストランで食堂車メニューが再現されていますが、当時の記憶にある料理より絶対美味いと思います。つまり、「高くてまずい食堂車」というのは、まんざら根拠のない誹謗中傷ではなかったようです。 高いとは言っても、経営側にとっては列車の乗客という限定された相手だけの商売ですから、市中の食堂と同様にはいきません。やがて、利用者の減少と人件費の増加で採算がとれなくなり、国鉄の合理化と合わせて食堂車は減少していきます。 現在営業している食堂車は、よく知られているとおり、「カシオペア」「北斗星」「トワイライトエクスプレス」に連結されているものだけです。供される料理はフレンチのコース料理、懐石弁当、和洋の朝食セットなどがメイン(パブタイムにはアラカルトもあります)ですが、料理のレベルは本格的なものになり、味も値段も中堅シティホテルのレストラン並みという感じで、「高くてまずい」という声は聞かなくなりました。 希少な存在となった食堂車で過ごす時間は、値段とは無関係に贅沢な体験です。贅沢から始まり、大衆化して、また贅沢へと戻った食堂車の歴史ですが、なんとか絶えることのないよう切に祈る次第です。 鉄道コラム「鉄学の道」過去の記事 ・宴会電車でGO! ・駅だって立派な文化財 ・みんな大好き、鉄道博物館 ・質感や躍動感に感じるロマン 走れ! 保存SL ・続・電車の足元、線路の幅の話:幅が違っても走ります … |
山本浩(やまもとひろし)。南海電気鉄道勤務。学生の頃から鉄道好きの鉄道会社員の目線で鉄道業界のあれこれを書き下ろす。自社の貴重でレアな話題も時折飛び出します?
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