二刀流アイロニングへの挑戦
[2009-11-17]
2004年当時、まず僕の十八番である「エアリアルアイロニング」に二刀流を取り入れた。助走をとり、アイロン台の手前でジャンプし、着地する直前にひと掛け入魂。アイロン台の横にシャツなどの対象物をずらすサポーターが付き、一回飛び掛けるごとにシャツの位置をズラしてもらう。すると、最速7回のジャンプでシャツ一枚のシワが伸ばせるのだ。これがエアリアルアイロニングの基本ルーティーンである。競技系アイロニングの世界で、我々EIJはこの技で世間一般に広く知られるようになったといっても過言ではない。このエアリアルアイロニングは、僕自身が開発した完全オリジナルの技なのである。 まずはトレーニング開始。さっそく両手にアイロンを持ち、いつものように跳んで掛けてみた。意外と難しい。アイロンを2つ持っていると、着地直前に自分の体の落下点がアイロン台の真上になり、結果2つ同時にうまく掛けれないのだ。しかし、これはアイロン台を2台、自分の落下点の左右に1台づつ配置することで容易に解決した。しかも単純にこの方法だと、7回の跳躍で2枚のシャツのシワが伸びるのであった。よりアスリート的な動きが要求されるこの二刀流は、やっていてもかなり楽しかった。二刀流アイロニングは見た目が結構派手なので、ダイナミックな動きが直接点数に加算される世界大会向けの技としても誠に申し分ない。こうして、いろんな意味で二刀流は有効である、という確かな手ごたえを、僕は徐々に掴んでいったのである。 次は応用編だ。二刀流アイロニングで最もやりやすそうなものとして、僕は跳び箱を使ったアイロニングにも力を注いだ。ようするに、跳び箱を跳ぶ感覚で、その上にアイロンを上手く滑らせればよいという事である。滑らす、という部分で多少の難しさはあったが、これはエアリアル時での二刀流に比べれば最初から格段にやりやすく感じた。このような様々なシチュエーションでの二刀流アイロニングを行いながら、競技系アイロニングにおいての両手遣いスタイルを、ある程度自分の中では確立していったのである。今はもう、世界大会がいつ開かれても、これらを出す準備はすでに出来ている。 こうして今では、日常行うアイロン掛けや、競技系エクストリームアイロニングにおいて、僕はこの二刀流アイロニングをごく当たり前のように取り入れている。しかし、それについて少しばかり疑問視する点もあるにはある。 たとえば野球。右でも左でも打てるプロ野球選手がいる。それはそれで凄い事なのだが、例えば右打ちが得意な選手が左打ちも出来るといった場合、その右打ちの能力が左打ちのほうにも持っていかれてしまうというのだ。その結果、右打ちも左打ちも抜きん出て上達する事はない、などという研究結果を発表した医者がいるのである。 要するに、右打ちが素晴らしい選手は、右打ちに集中したほうが更に上達するし、良い結果も出る、という事なのである。この理論だと、片手に集中したほうが絶対に良い、という結論に他ならない。だから、アイロン掛けもあえて左手では行わず、右手なら右手だけで行うほうが更に上達する、という事にもなる。これは非常に興味深い。約20年間アイロン掛けをしてきて、左手でも使い始めたのはほんの5年前。なので、このまま二刀流を続けていくと、この先どんな影響があるのかは僕にもまだ判らないのであった。 宮本武蔵のような哲学的ともとれる理論や、奥の深い精神性が存在する武道の中の二刀流的世界。高い探求心と継承の精神がそこには存在する。少しおこがましいかもしれないが、この二刀流アイロニングも、そのくらい深く長く突き詰めながら実践していけたらいいと僕は思っている。どうせやるなら、僕は人とは違うスタイルで勝負したい。もっとオリジナルを追求してみたい。それにより、アイロニングにもまた新しい発見があるかもしれないからだ。事実、このスポーツをやり始めてからは、日々発見の連続なのだった。二刀流アイロニング的いばらの道。男なら、自信を持って突き進むのみである。両手に熱いアイロンを持って。 2つのアイロンからほとばしる蒸気に霞む、エクストリームアイロニング的限界点。それは、今の俺にはまだ見えないのである。 KEEP THE IRON HOT.
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松澤 等の「エクストリームアイロニング」 過去の記事
松澤等(まつざわひとし)。サーフィン、カヌー、山登り、ロッククライミングなどのスポーツを経て2004年、エクストリームアイロニングジャパン(EIJ)発足。高い身体能力とユーモアセンスを取り入れた活動内容で国内のEI人気を着実に向上させている
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