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電車の足元、線路の幅の話:狭軌と広軌はどう違う?(2)

[2009-11-09]

鉄道コラム「鉄学の道」/毎週月曜更新

乗りつぶし率99%の鉄道会社員が 
書き下ろす鉄分たっぷりコラム。

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 前回の記事に続き、線路の幅のお話です。そもそも線路の幅は広いほうがいいんでしょうか、狭いほうがいいんでしょうか。一般論としては、線路の幅が広いほうが安定が良く、高速化しやすくて車両も大きくできるという利点がある一方、狭軌の場合は軽量化でき、地形の悪いところでも建設しやすく、建設費もかからない、という利点があります。しかし実際は、鉄道は線路と駅やトンネルなどの施設の総合的インフラなので、運転速度や車両の大きさは線路の幅以外の要因に左右されます。


狭軌でも高速運転は可能


 初期の蒸気機関車の時代は、線路の幅が広いと機関車のボイラーやシリンダーも大きくできて出力が高くなり、動輪直径も大きくできて高速化できるという図式があったのですが、その後の車輌技術の進歩で狭軌でも高出力・高速の機関車が作れるようになりました。また、最高速度は急曲線や急勾配の有無に影響されるので、狭軌でも曲線・勾配を緩くして線路を頑丈にすれば200km/h走行も不可能ではありません。

 車両の大きさに関しては、線路の幅というより付帯設備全体を含めて考慮した基準値である車両限界によって決まります。狭軌1067mm軌間であるJR在来線の車両限界は幅3m・高さ4.1mで、標準軌1435mmの欧州大陸諸国とほとんど変わりません。英国の車両などもJRの車両と同程度か若干小さいぐらいです。国内でも、路面電車タイプでありながら都市間電車を目指した阪神は、標準軌を採用したにもかかわらず長い間車両限界が路面電車サイズのままで、幅2.3mという小型車を走らせていました。他社並みの大きさの車両が入ったのは昭和29年からです。

 このように、少なくとも現在の日本においては、狭軌は標準軌に対するハンデにはなっていません。しかし、狭軌より標準軌・広軌のほうが高速・大量輸送に適しているとするのが常識だった時代の明治末から大正にかけて、増大する輸送量に対処するため国内の鉄道を標準軌に改良しようという計画が真剣に検討されていました。大正6年には横浜線で軌間変更工事のテストまで実施され、全国標準軌化の工事計画案も作成されていたそうです。

 その一方で、自動車交通の無い時代の鉄道は唯一の陸上交通機関であり、狭軌のままでいいから全国各地へ路線を伸ばし、地域振興を図るほうが先だとする主張も強く、軌間改良優先(改主建従)派と路線建設優先(建主改従)派とが政治的対立を起こす事態となりました。結局、建主改従を主導する政友会が改主建従派を強引にねじ伏せる形で決着しましたが、要するに政友会は鉄道を引っ張ってくることで得られる地方の票と利権が欲しかったわけで、この辺の構造は高速道路や空港などバリエーションが増えた以外、今もあまり変わっていないようです。

標準軌の車両が狭軌の車両より大きいとは限らない。狭軌のJR・E231系は幅2.95m。
標準軌の車両が狭軌の車両より大きいとは限らない。狭軌のJR・E231系は幅2.95m。(クリックで拡大)
標準軌の京急1000形の車体幅は2.83m。
標準軌の京急1000形の車体幅は2.83m。(クリックで拡大)



鉄学の道

山本浩(やまもとひろし)。南海電気鉄道勤務。学生の頃から鉄道好きの鉄道会社員の目線で鉄道業界のあれこれを書き下ろす。自社の貴重でレアな話題も時折飛び出します?

→  http://www.nankai.co.jp/

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