電車に乗って温泉へ行こう
[2009-10-19]
鉄道開通で発展した温泉地鉄道により足の便が良くなった温泉地は行楽客が増えて知名度が上がり、知名度に惹かれてさらに鉄道で温泉を訪れる人が増えるという好循環が続き、熱海・草津・伊香保・水上・有馬・城崎・白浜・別府といった温泉は、一大観光地へと発展していきました。 戦後は、敗戦の混乱がやっと収まってきた昭和24年に伊豆方面への温泉準急が運転を開始し、翌25年には小田急ロマンスカーが箱根湯本に乗り入れ、26年には東武も日光・鬼怒川温泉行き特急に新型ロマンスカー(5700系)を投入、戦後復興と高度成長により鉄道の温泉客は増え続け、有名温泉地には部屋数100を超える巨大温泉ホテルが続々と建設されました。高度成長のピークには、伊豆方面行き「伊豆」、水上行き「ゆけむり」、南紀方面行き「きのくに」、別府行き「ゆのか」といった温泉急行はシーズン中常に満員の盛況でした。 車産業の発展で徐々に衰退しかしちょうどその頃からモータリゼーションの進展で温泉旅行は鉄道からマイカーへとシフトし、温泉地の足だった小規模なローカル私鉄は次第に廃止されていきました。旅行形態も団体中心から個人・グループ主体に変化し、温泉急行や貸切バスでほろ酔いの団体客が大挙繰り出すようなモデルは主流ではなくなったため、巨大温泉ホテルが経営危機に陥る事態となりました。一方で秘湯ブームが起き、鄙びた温泉の方に魅力を感じる観光客が増えています。鉄道ですぐ行ける温泉は秘湯ではありませんから、こうした温泉はマイカーの独壇場になります。 それでも、小田急ロマンスカーは箱根、東武スペーシアは日光・鬼怒川とセットでイメージとして定着していますし、伊豆の「スーパービュー踊り子」「リゾート21」や九州の「ゆふいんの森」のように、温泉へ行くまでの列車自体に魅力を持たせる試みもそれなりに成功しています。「鉄道で温泉へ」は主役ではなくなりましたが、戦略次第でまだまだ充分活躍できそうです。むしろ団体客を満載したかつての温泉急行より、今のほうが鉄道での温泉旅行をゆっくり楽しめるでしょう。この秋にでも、電車で温泉はいかがでしょうか。 鉄道コラム「鉄学の道」過去の記事 ・ケーブルカーは鉄道ですか? ・本当に便利? 相互直通運転のプラスとマイナス ・「汽車」と「電車」と「列車」 ・歴史の彼方に去りし日本二大航路 鉄道連絡船 ・鉄道名作劇場 (4)漫画のキャラクターも乗客です … |
山本浩(やまもとひろし)。南海電気鉄道勤務。学生の頃から鉄道好きの鉄道会社員の目線で鉄道業界のあれこれを書き下ろす。自社の貴重でレアな話題も時折飛び出します?
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