人間のど真ん中にあるもの 業を見つめる表現師 − 佐伯俊男(絵師)

[2009-09-17]

抑圧されてなお磨かれる、個性と表現力


佐伯 (男性器が顔になっている絵を指し、)これも危ないからと、描き直したんですよ。

武者 なるほど、こういう風にだんだんシュールになっていくんですね。苦労して描いても、作風を変えなくてはいけないときもあると。

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佐伯 72~73年頃、時代作家の山田風太郎さんの文庫本の表紙絵を任せてもらったんですが、その頃から角川文庫の装丁はビジュアル面に力を入れはじめていました。昔は文庫本といったらもっと地味な感じでしたが、角川春樹さんがでてきて、若い人たちにもっと読んでもらおうということで積極的にイラストレーターを使い出したんですよ。ぼくには風太郎さんをやらないかって。

風太郎さんの忍法帖シリーズで、僕がやらせてもらったのは40冊近くあるんですが、当初はかなりエロも押し出していたんです。でも、風太郎さんから「本を買いたい人がレジに行くのをためらうから絵の女性に着物を着せてくれ」と言われて、加減をおさえて再販したんです。始めの頃の表紙絵は短期間しか世に出なかったので、今も大切にもっていてくれる方がいるようです。

ですから、苦労は多いですよ。なんだかんだ言っても、エロはこの業界のど真ん中を歩けない。メジャーなところには出て行きにくいんです。友だちにあげた絵も、最初は飾ってくれていても嫁さんができるとどこかへしまっちゃう(笑)。親戚にもちゃんとした日本画を描いてくれと言われます。だから、覚悟はいりますよ。

武者 表現者は疎まれる、ってね。

佐伯 先ほど「僕の真似はできない」と言ったのは、そういう意味でもあるんです。
 
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一貫した思想と、それを描く表現力を兼ね揃えた絵師のつぶやきともとれる言葉には、険しい道を歩んできた者の苦悩が見て取れる。佐伯俊男の後に続く表現者は、まだ現れない。その自信と覚悟に様々な思いを抱きながら男が絵師の家を後にする頃、けたたましかった昼の蝉の声にひぐらしの声が混じりかけていた。


(取材・文/男の隠れ家ONLINE編集部 撮影/菊池 友理)




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