人間のど真ん中にあるもの 業を見つめる表現師 − 佐伯俊男(絵師)

[2009-09-17]

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独自性は、「色指定印刷」という画法にも


武者
 本番は何をつかって描いているんですか?

佐伯 ペンです。ケント紙に黒インクで描くだけ。印刷する時に、色を指定します。

武者 色の指定は、色見本も添えるんですか?

佐伯 番号だけで指定します。網の掛け合わせで色をつくる。たとえば紫をつくるために、赤と青をパーセンテージ指定して掛け合わせるんです。色見本はだいたい頭に入っているので、これは何%で、これが何%かなと。

武者 それはやはり、普通の画家とは違う感覚ですよね。

佐伯 そうなんです。…こういうふうに、色指定がほとんどの原画にはいっている。

武者 全部先生が? すごく細かい指定だ。

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佐伯
 印刷屋さん泣かせなんですよ(笑)。 

武者 へええ。やっぱり原画は迫力がある。先生の絵には、表現の前に構図がしっかりとある。目が自然と行き先を捉えるというか。自然と何をどう見せるかというのが計算されていると思うんです。作家が自分の内面を表現する面と、デザイナーの考える構図のセンス、この両方が共存してますね。

佐伯 そうですね。色を指定するのは、明らかにそうです。技術的なことで言えば文字を入れたり、レイアウトも自分でやってますから。グラフィックデザインをやっていたときのキャリアが生かされていると思います。


天才絵師の頭の中


武者 先生の絵は、人間の中にある怖いもの見たさというか、ひとつ作品をみると次々と見たくなる衝動を刺激する力がある。絵の中にいろいろな印象があって、エロティズムもあればホラーもあり、パロディ的なユーモアもあって。

たとえば浮世絵なら写楽や歌麿、北斎、小説なら江戸川乱歩、絵だと横尾忠則だとかと同じ波長を感じますが、描写で影響を受けた芸術家はいますか?

佐伯 僕は案外、影響されることがないんですよ。最近は資料も見るようになりましたが、若い頃は想像で描いていました。あとで見ると実際のものとは異なったり、考証的には間違っていたりすることもあるんですが、それは違っているなりにその世界のものだから。絵の中の世界では成立しているんですね。

武者 先生の作品って、70年代の絵を今見ても、色あせない。いま僕が見ても、佐伯俊男の絵を初めて見る若い子たちが見ても、昨日描いたと言われても信じてしまうほどの新鮮さがある。かっこいいと思うんですよ。

佐伯 まあ、ある種の普遍性でしょうか(笑)。でも本当に、不思議なことに何年かに一度、巡ってくるんです、小さななブームみたいなものが。ぼくはあまり勉強熱心なほうじゃない。この家でのんびりしていることが多い。でも、ある一定の周期で繰り返し、画集を出しませんか、などと話を持ちかけてくれる人がいるんです。

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(クリックで拡大)
武者 サイクルみたいなのができてるんですね。

佐伯 とくに時代に合わせて描いているつもりはないんですけれどね。

武者 先生の画風の後追いをしてくるイラストレーターもいるのでは?

佐伯 僕の真似はできないでしょう(笑)



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